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早期消化管癌に対しての新規内視鏡治療③

[2024.05.03]

癌治療で最も大事なことは早期発見・早期治療です。

私はこの領域に全力を尽くしてきましたが、社会全体を見渡すと全ての人がこの領域で病気を食い止めることができているわけではありません。私は癌治療に携わってきたものとして、病気が進行してしまい、今まさに病気によって苦しんでいる人に対しても十分な医療を届けたいという思いがあります。

急性期医療、癌治療などの高度医療には若手医師が集まりやすいので、このまま成熟していく分野だと考えています。一方、慢性期医療・緩和治療・在宅医療にはまだまだ十分な人材が集まっていないのではないでしょうか。今後高齢化社会が進む中でさらに必要とされていく分野であり、やる気のある人材が集まり、より多くの人に医療を届けることができるような体制を整えたいと思っています。

 

さて、今回紹介する内容は、早期消化管癌治療の中でも最も困難とされる大腸憩室内にできた癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を可能とする手法です。憩室には筋層が存在しませんので、穿孔率リスクが極めて高く治療難易度を上げています。

このような高度難易度治療を行うためには、数多くの経験と技術習熟が必要であり、実際に治療できるのは世界的にも限られた内視鏡医だけになってしまいます。それをできるだけ、安全に効率よくできるように開発した手法がC-CIM(Countertraction and circumferential-inversion method combination)

です。

 

Endoscopic submucosal dissection for diverticulum using countertraction and circumferential-inversion method combination

 

この手法は初回紹介したCIMの応用です。憩室内の筋層は欠損しており穿孔リスクが高いこと、またナイフが届かないことが問題となります。この部位に対してESDを行うためには、憩室周囲病変の十分な剥離を行ったうえで、憩室内から病変を引っ張り出す必要があります。また引っ張り出した病変に対しても全周性に剥離を行わなければ、病変が断裂してしまいます。

このC-CIMでは全周性に内反する牽引により、憩室周囲の剥離を可能とし、その後の対側へのCountertractionにより病変を憩室から均等に引っ張り出すことができます。この力を利用することで憩室内にもナイフが届くようになり、病変を断裂させることなく、きれいに剥離を完了することができます。極めて高難易度な治療のハードルを少しでも下げて、多くの医師の手が届く手技になることを目指した手法になります。

 

参考文献:Takayama H, Morita Y, Takao T, Motomura D, Takao M, Toyonaga T, Kodama Y. Endoscopic submucosal dissection for diverticulum using combination of countertraction and circumferential-inversion method. Endoscopy. 2024 Dec;56(S 01):E91-E92. 

 

私はこのように癌の治療に携わってきましたが、この領域は十分に成熟しつつある領域であるのも事実です。

高齢化社会を迎える日本の次なる課題は、進行してしまった病気、治療できない病気で苦しんでいる方に対してもアプローチしていくことなのではないかと考え始めました。次回はなぜ在宅医療に携わろうと思ったかについてもお伝えできればと思います。

 

明石、神戸(垂水区、須磨区、西区)で訪問診療・在宅医療・緩和ケア・往診ができるよう準備をしています。

ささえ在宅クリニック 高山弘志

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